<メディカル委員会からのお願い>レースにおける注意事項
4月下旬に開催されるぎふ清流ハーフマラソンでは、レース中に気温が25℃を超えることも珍しくありません。
レースに臨む前に今一度、主に熱中症などレース中に起こりうる体調面のトラブルについて確認し、適切な知識を持ってレースに臨んでください。
熱中症
高温の環境下でのレースでは、体内の水分やナトリウムなどの塩分のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして、熱中症と総称される様々な障害が発症します。
予防法をきちんと心得て、レースに臨むようにしてください。
熱中症の起こり方
体内に溜まった体内に溜まった熱を体外に逃す方法(熱放散)には、皮膚の表面から直接熱を外気に逃がす放射や液体や固体に移す伝導、風によってその効率を上げる対流等があります。しかし、外気温が高くなると熱を逃しにくくなります。汗は蒸発する時に体から熱を奪います。高温時は熱放散が小さくなり、主に汗の蒸発による気化熱が体温を下げる働きをしています。汗をかくと水分や塩分が体外に出てしまうために、体内の水分・塩分が不足し、血液の流れが悪くなるので、適切な水分・塩分の補給が重要になってきます。(環境省 「熱中症 環境保健マニュアル」より)

熱中症の症状と重症度
熱中症は症状に応じて下図のように分類されます。

意識障害があれば重症で、救急搬送して病院での治療が必要となります。
熱中症予防のための指針
気温単体ではなく、人体へ影響を及ぼす複数の要素を取り入れた指標であるWBGT指数を用いたランナーの行動指針が出ています。以下の表を参照し、気温・湿度が高いときはペースを落とす/リタイアを検討してください

フラッグシステム
レース当日は、熱中症予防のためフラッグシステムを用い、暑さ指数(WBGT)を測定しコース上6カ所にある救護所に旗を掲示します。
- 警戒レベルが「中程度」を示す18~22℃の時は「黄色」の旗が掲示されます。ペースを落とし、状況の悪化に備えてください。
- 警戒レベルが「高い」を示す22~28℃の時は「赤色」の旗が掲示されます。危険度が高い状態のため、ペースを落とし、体調に異変がある場合は無理をせずリタイアを検討ください。
- 警戒レベルが「極めて高い」を示す28℃以上の時は、少しでも体調の異変・異常を感じた際には積極的にリタイアしてください。近くの救護スタッフ(赤色Tシャツ)や走路員(緑色Tシャツ)に声をかけ、指示に従ってください。

熱中症の応急手当
熱中症の症状に対しては、程度に応じて以下の手当てを参考にしてください。

運動関連性低ナトリウム血症
レース前またはレース中の水分補給を適切に行うことは非常に重要です。
レース前、レース中の水分の過剰摂取は、血液中のナトリウム濃度が低下し、運動関連性低ナトリウム血症を引き起こします。
症状としては、運動能力障害、手足のむくみ、めまい、嘔気・嘔吐、頭痛、意識障害、混乱、痙攣、瞳孔散大などが挙げられ、初期症状は脱水症との鑑別が困難です。
一度に大量の給水を行うことは避け、適切な間隔と量を意識した給水を心がけてください。
運動関連性虚脱
レースを完走し、ふくらはぎの筋肉が動きを停止した後に、血液が両足に溜まることで引き起こされる体位性低血圧のことを言います。脳貧血での転倒や意識消失といった事態につながるため、フィニッシュ後は、以下の項目にもあるように急に立ち止まらず、しばらく歩き続けることを意識してください。
心停止の対応
マラソン大会では数万人に1人の割合で突然の心停止が発生する可能性があります。
レース中に突然倒れる、呼びかけて反応がない、呼吸がない/普段どおりでない呼吸、反応がない・呼吸がないか分からない、といった状況に遭遇した際は、心停止を疑ってください。
即座に近くの救護スタッフ(赤色Tシャツ)に声をかけ、119番通報してください。
胸骨圧迫(心臓マッサージ)、AEDを使用し、救急車が到着するまでの蘇生を試みます。
ゴール付近の注意点
上記の運動関連性虚脱に備え、フィニッシュ地点では立ち止まらず、そのまま歩き続けてください。
これまで述べてきた
- 心停止
- 労作時熱中症
- 低ナトリウム血症
といった症状を避けるためにも、立ち止まらず、そのまま動き続けることを意識してください。
そして最後に、フィニッシュ地点付近でのラストスパートはとても危険です。
身体に高強度の負担がかかり、最悪の場合、心肺機能停止(CPA)に陥る危険性が高まりますので、無理をせず、ペースを維持してフィニッシュするよう心掛けてください。
ハートサポートランナー


レース中のアクシデントは一刻を争うため、救急車やAEDを持ったスタッフが駆け付けるまでの初期の手当てが明暗を分けます。
ぎふ清流ハーフマラソンには、医療スタッフのほかに、救命救急講習を受講した100名以上のランナーが皆さんと一緒にレースに参加しています。
レース中、身近なところで体調に異変をきたしたランナーを発見した際は、近くのハートサポートランナーや、救護スタッフ(赤色Tシャツ)や走路員(緑色Tシャツ)に助けを求めてください。
「ハートサポートランナー」の名前には、ハート(心臓)だけではなく、ランナー同士が助け合う気持ちをという意味も込められています。ぎふ清流ハーフマラソンに参加される皆さまには、ハートサポートランナーとしてのエントリーをお待ちしております。